『禅とジブリ』はどう生まれた?鈴木敏夫さんが語った京都展までの7年
ジブリと禅は、なぜ出会った?鈴木敏夫さんが明かした意外な始まりから、書籍、京都展へつながる物語を紹介します。
この記事で分かること
- 『禅とジブリ』が生まれた意外なきっかけ
- 鈴木敏夫さんが書籍タイトルを決めた経緯
- 書籍から京都展へ発展した約7年の物語
スタジオジブリと「禅」。
一見すると、なぜこの2つが結びつくのだろう?と思う人も多いのではないでしょうか。
2026年10月3日から京都市京セラ美術館で開催される「禅とジブリ」京都展を前に、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが、この不思議な組み合わせが生まれたきっかけを語りました。
実は「禅とジブリ」という言葉そのものも、鈴木敏夫さんの一言から誕生したのだそうです。
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「禅僧さんと話をしてほしい」突然届いた一通の手紙
「物事が始まるには、そもそも仕掛け人がいるんですよね」
鈴木敏夫さんが「禅とジブリ」の始まりとして紹介したのが、茶道関係の書籍などを出版する京都の出版社・淡交社の担当者、磯畑さんです。
ある日、鈴木さんのもとに磯畑さんから一通の手紙が届きました。
その内容は、
「禅僧さんと話をしてほしい」
というもの。
鈴木さん自身、禅について特別詳しいわけではなく、最初は「一体何のことか分からない」と感じたそうです。
それでも、その手紙がなぜか気になった鈴木さん。
「一度会おうじゃないか」
と磯畑さんに会い、なぜ自分と禅僧を対談させようと思ったのか尋ねることになります。
なぜジブリと禅?最初の理由は意外なものだった

鈴木さんが知りたかったのは、
「なんでジブリと禅を結びつけたの?」
ということ。
ところが当時、磯畑さんから明確な答えは返ってこなかったそうです。
鈴木さんの言動などを見て「禅と関係があるような気がした」という程度の話だったと振り返ります。
そして今回の展覧会を開催する際、改めて企画の原点を書いてもらったところ、その理由として出てきたのが、
「鈴木さんがいつも作務衣を着ているから、禅と近いのかな」
というものだったそうです。
鈴木さんも思わず「実にいい加減なやつだな」と会場を笑わせます。
しかし、そんな何気ない着想から始まった企画が、約7年の時間をかけて書籍、そして展覧会へと発展することになります。
禅僧との対談が書籍『禅とジブリ』へ
淡交社が発行する月刊誌『なごみ』で、鈴木敏夫さんと禅僧との対談企画がスタート。
鈴木さんは、
・東京・龍雲寺の細川晋輔さん
・鎌倉・円覚寺の横田南嶺さん
・福島の玄侑宗久さん
らと語り合いました。
その連載を一冊にまとめることになり、やがて書籍が誕生します。
ところが、ここで問題になったのが「本のタイトル」でした。
『禅とジブリ』というタイトルは鈴木敏夫さんが決めた
連載時のタイトルは、
『ちょっとお茶でも飲んでいきませんか?』
鈴木さんは、このタイトルをとても気に入っていたそうです。
ところが、書籍化する際にはタイトルを変更することに。
理由を聞くと、出版社側から返ってきたのは、
「売りたいから」
という非常にストレートな答えでした。
さまざまなタイトル案が出されたものの、どれも長かったそうです。
そこで、せっかちな鈴木さんが、
「『禅とジブリ』にしよう」
と言ったことで、このタイトルが誕生しました。
そして鈴木さんは、このタイトルこそが、今回の展覧会につながったきっかけだったと振り返っています。
本だけで終わるはずが「展覧会をやりたい」
『禅とジブリ』が一冊の本になり、「これですべて終わる」と思っていたという鈴木さん。
ところがその後、スタジオジブリでイベントを担当する星野さんから、
「『禅とジブリ』というタイトルで展示会をやりたい」
という話が持ち上がります。
鈴木さんは、聞いた瞬間に「面白い」と感じた一方、
「禅とジブリをどうやって結びつけるんだ?」
という疑問もあったといいます。
今回の展覧会では、ジブリ作品の世界だけでなく、日本の禅を海外に伝えたことで知られる鈴木大拙について紹介する展示も登場。
ジブリ作品と禅という、一見異なる2つの世界を同じ空間で体感できる展覧会となっています。
『禅とジブリ』が海外へ 鈴木敏夫さん自身も驚く展開に
鈴木さんによると、ここ数年で『禅とジブリ』を海外で出版したいという話が相次いでいるそうです。
アメリカ、韓国、中国、イタリアなど、さまざまな国から出版の話が同時期に舞い込んできたといいます。
国内でも増刷され、鈴木さん自身、
「そこまでいくとは思ってなかった」
と驚きを語りました。
さらに海外出版まで含めると、自身がこれまで出してきた本の中でも「一番売れた本になるんじゃないか」という話まで出ているそうです。
鈴木敏夫さんと「禅」には昔から不思議な縁があった
興味深いのは、鈴木敏夫さん自身と禅との縁です。
名古屋出身の鈴木さんが東京へ出て、最初に購入した本が、なんと禅を海外に広く紹介した仏教学者・鈴木大拙の本だったといいます。
理由の一つは、同じ「鈴木」という名前だったこと。
さらに「大きく拙い」と書く「大拙」という名前にも惹かれたと振り返ります。
また、鈴木さんが通った東海中学校・東海高校は仏教系の学校。
学生時代には毎年、京都の知恩院を訪れていたそうです。
今回京都を訪れ、久しぶりに知恩院を目にした際には、
「なんか胸にちょっと来た」
と、当時の記憶がよみがえったことも明かしました。
偶然のように始まった「禅とジブリ」ですが、鈴木さん自身の人生を振り返ると、実は昔から仏教や禅につながるものがいくつも存在していたようです。
「禅とジブリ」京都展は10月3日から開催
「なんでジブリと禅を結びつけたの?」
鈴木敏夫さん自身が最初に抱いたこの疑問。
その答えを、実際のジブリ作品を通して体感できるのが「禅とジブリ」京都展です。
映画『君たちはどう生きるか』を中心に、名セリフや場面写真、鈴木敏夫さんの書などから、ジブリ作品の中にある「禅的なものの見方」に触れていきます。
2026年10月3日(土)~12月6日(日)
10:00~18:00
※最終入場17:30
京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ
月曜日
※祝日の場合は開館
一般・大学生 1,900円
中学・高校生 1,500円
小学生 1,100円
※未就学児無料
「ジブリのどこが禅なのか」。
答えを先に決めつけるのではなく、作品を見ながら自分自身で感じてみる。
鈴木敏夫さんが語った誕生秘話を知ってから展覧会を訪れると、「禅とジブリ」という少し不思議なタイトルの見え方も変わってきそうです。
「禅とジブリ」京都展の展示内容やチケット情報については、こちらの記事で詳しく紹介しています。